昭和60年ごろのこと。駅で出会った国文学者のF先生と大学へ向かっていた。 私「あちこちに、くちなしの花が咲き始めてますね、先生」 F「おや・・・知るってますねぇ・・くちなしは分かるみたいだね」 私「はは・・・大学生のとき、同期にこの花がくちなしだって教えてもらったことがあるんですよ」 F「おや。そうですかぁ。それじゃぁくちなしの実は染料だって知ってますか?」 私「え?せんりょう・・・千両ってどれくらいの価値ですか?」 F「お金の千両じゃなくって、白い布なんかを染める物としての、染料ですよ」 私「はは・・・そうなんですか?」 F「ええ・・くちなしって秋に黄色い実がなるんですよ。これをつぶして、染…