【書】『奥の細道』序章6(No.1,856) 「弥生も末の七日、あけぼのの空朧朧として、月は有明にて光おさまれるものから、富士の峰かすかに見えて、上野・谷中の花の梢、またいつかはと心細し」(訳:旧暦三月弥生も末の二十七日、曙の空が朧に霞んで、有明の月は光が薄らいでいるけれど、富士山がかすかに見える。上野・谷中の桜の梢をいつまた見ることができるかと思うと心細くなる)。 早く旅に出たいと思う一方、上野・谷中の見事な桜を見ることは見ることはもうないのではないかと思う。 旅心に沸き立つ思いと後に残されたものへの哀愁が入り混ざる芭蕉の心境に思いを馳せる。この時の芭蕉には、もう二度と生きて還って来れないの…