原尞『それまでの明日』 今日は読書の話題でミステリー編。原尞の『それまでの明日』。 原尞は2年前に亡くなった作家で、ハードボイルド風の作風で知られる。きわめて寡作で、作家デビューしてから35年間で長編5作、短編集1作しか書いていない。私のベストは直木賞受賞の『私が殺した少女』と短編集の『天使たちの探偵』で、特に『天使たちの探偵』は好きだ。『それまでの明日』は、2018年に出た長編で、結果的に最後の作品となった。 文庫本で500ページほどの結構長めの長編。例によって私立探偵沢崎が主人公だが、年齢を重ねてすでに五十代になっている。沢崎の探偵事務所に望月という金融会社の支店長が調査の依頼に来るところ…