ところで、あの人の療治はずいぶん面白いことをするのでございます。マルファさんはある水薬を知っていて、いつも絶やさないようにしまっておりますが、何かの草をウォートカの中に浸けたきつい薬でございます。あのひとはその秘伝を知っておりますので。グリゴーリイさんは一年に三べんほど中風かなんぞのように、腰が抜けてしまいそうなほど痛いので、そんな時この薬で療治をします。何でも年に三べんくらいでございます。その時マルファさんは、この草の汁をしませた酒で手拭を濡らして、三十分ばかりつれあいの背中を一面にこすって、からからになって赤く腫れあがるまでつづけた後、何かおまじないを言いながら、壜に残っている薬をつれあい…
講義するわけにゆかぬ。よしルーテル派やその他の異教徒が、羊の群を奪い始めようとも、勝手に奪わせるほかはない。自分らの収入が少いのだから、などと断言して憚らないものさえある。ああ、神よ、彼らのためにかほどまで貴き収入を、いま少し多分に与えたまえ、と余は考えた(なぜならば、彼らの訴えにもまた道理があるからである)。しかし、真実のところを言うと、もしこれについて誰か罪があるとすれば、それはなかば余ら自身なのである。なぜなれば、たとえ余暇がないとしても、たとえ二六時中、労働と勤行《ごんぎょう》にさいなまれているという彼らの申し分に道理があるとしても、せめて一週間にたった一時間でも、神のことを思い起す時…