幼少時の生家のくらしを思い出すと、その後60年余の日本農業と農村の激変がよく分かる。意識すべきは、農村変貌の行き着く先が未来人の生存を脅かすようであってはならない、ということ。「ほんのちょっと昔の農とくらし」を掘り起こす試みの真意は、その激変の裏で失ってしまったものが大きすぎたのではないかとの懸念にある。安易に投げ捨ててしまった文化、農とくらしの技に、実は未来人を救う何かがあったのではないか。 1960年前後を境にして農村の風景がガラガラと変わっていったが、その只中で「自分の身に起こっていた」ことを、成人後に身に付けた第三者的な目で再現してみようと思った。それは単なる懐古ではない。 1959年…