画像は幻想小説の鬼才、中井英夫の “ とらんぷ譚 ” 四部作です。1973年(昭和48年)から1978年(昭和53年)にかけて出版されました。 スリップケースに収められたハードカバーはサテンクロス装、箔押し。本文二色刷り。外箱、口絵、トビラ、さらには各短編のタイトルページにも建石修志の挿絵が入るという凝りに凝った装丁です。驚くことに、これらは限定本でも特装本でもありません。大手の平凡社による単行本で、普通に街の書店に並びました。1350~1900円と、当時としてはかなりの高額にもかかわらず一般書店で流通したということは、出版文化が現在とは違っていたのでしょうか。 たしかにこの時期、日本の出版文…