梅崎春生『カロや』(中公文庫)を読む。梅崎は飼った猫をカロと名付ける。4代にわたって飼われたが、いずれもカロと名付けられた。その3代目のカロについて、 (……)カロが、我が家の茶の間を通るとき、高さが5寸ばかりになる。私が茶の間にいるとき、ことに食事時には、そういう具合に低くなる。ジャングルを忍び歩く虎か豹のように、頭を低くし背をかがめ、すり足で歩くのだ。 なぜこんな姿勢になるかというと、私が彼を打擲(ちょうちゃく)するからだ。カロを叩くために、猫たたきを3本用意し、茶の間のあちこちに置いてある。どこにいても手を伸ばせば、すぐ掌にとれるようにしてある。カロが背を低くして忍び歩くのは、私の眼をお…