この人をえ抱きたまふまじければ、 上蓆におしくくみて、 惟光乗せたてまつる。 いとささやかにて、疎ましげもなく、 らうたげなり。 したたかにしもえせねば、 髪はこぼれ出でたるも、 目くれ惑ひて、あさましう悲し、 と思せば、 なり果てむさまを見むと思せど、 「はや、御馬にて、二条院へおはしまさむ。 人騒がしくなりはべらぬほどに」 とて、 右近を添へて乗すれば、 徒歩より、君に馬はたてまつりて、 くくり引き上げなどして、 かつは、いとあやしく、 おぼえぬ送りなれど、 御気色のいみじきを見たてまつれば、 身を捨てて行くに、 君は物もおぼえたまはず、 我かのさまにて、 おはし着きたり。 人びと、 「い…