九井諒子『ダンジョン飯』を読んだので、感想を書いておく。キャラクターたちの「偏り」がとても魅力的で、かつ独特の(ある意味とても現代的な)死生観に貫かれた作品だったように思う。ライオスというキャラクターの性質として、作中で繰り返し人間に興味がないと語られている。それは彼の言動を見れば一目瞭然であり、彼は人間よりも魔物など他の生きものに強い興味を示し続けている。一方で、マルシルやチルチャックは彼らよりもずっと他者との距離感が(よくも悪くも)平凡である。マルシルやチルチャックは人間の形をした生きものを食うことに抵抗感を示す。マルシルの場合は漠然と「気持ち悪い」生きものや(序盤には)墓場であったダンジ…