『ゲゲゲの鬼太郎』を描く前までを中心にした水木しげるの自伝本。のべつくまなしに語られるエピソードの一つ一つがやたらと濃ゆい↓ 学校に馴染めず日がなベンケイガニを眺めて過ごし、入学してみた美術学院は退屈で自分から辞め、誰でも入れるといわれた園芸学校には入試で落とされ、新聞配達と学生生活を平行しているうちに赤紙が届き、最前線に送られて片腕を無くし、いっぽうで村民と仲良くなった結果あわや現地の住民の一人となりそうになり、終戦後には魚屋をやりアパート屋をやりかたわらに漫画を持ち込み……などなど。 「俺はこんだけ苦労をしてたんだ」という風でもなく、ニヤニヤと口笛でも吹きながら書いてんじゃねーかな、と思わ…