正法眼蔵「即心是仏」の参究 (改訂版) 2023年8月 唐子正定 序論:「即心是仏」の巻を読むにあたって 「即心是仏」という言葉はもともと馬祖道一の言葉である。ふつうこの言葉は、即心は仏である。自己存在又は自己自身は修証と無関係にそのまま仏であると解されている。しかし道元禅師のこの巻では全く破天荒な解釈がなされている。その大筋を示そうとすると以下のような筋道になるだろう。 第一に禅師の立場は空の場に立っているということである。もともと一切法は空の場の内にあって空から空へである。その空の場にあっては諸法は例外なく無自性にしてそのときその場の動力学の内に働いている。しかしこの空の場に立つには、我々…