『銀河鉄道の夜』の初期形第一次稿(1924冬)の出だしに登場するのは「橄欖(かんらん)の森」である。この「橄欖の森」には物語の舞台が北米大陸にも関わらず,我が国の「蛇紋岩」や「橄欖岩」を産出する北上山系(「東北」)の大地が二重写しの風景として立ち現われ,その風景の中に「蝦夷(エミシ)」や「アイヌ」といった「先住民」を象徴する在来種の「杉」がイメージされていた(石井,2018)。しかし,このイメージされた「東北」の大地には「先住民」だけでなく,多くの「移住者」やその末裔たちも住んでいた。 「杉」が「先住民」を象徴するなら,「移住者」を象徴する植物はなんであろうか。「東北」の大地に先住した「蝦夷」…