【古文】 「書きそこなひつ」 と恥ぢて隠したまふを、 せめて見たまへば、 「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな いかなる草のゆかりなるらむ」 と、いと若けれど、生ひ先見えて、 ふくよかに書いたまへり。 故尼君のにぞ似たりける。 「今めかしき手本習はば、いとよう書いたまひてむ」 と見たまふ。 雛など、わざと屋ども作り続けて、 もろともに遊びつつ、 こよなきもの思ひの紛らはしなり。 かのとまりにし人びと、宮渡りたまひて、 尋ねきこえたまひけるに、 聞こえやる方なくてぞ、 わびあへりける。 「しばし、人に知らせじ」 と君ものたまひ、 少納言も思ふことなれば、 せちに口固めやりたり。 ただ、 「行方も…