空調の風を切る音だけがゆるやかに響く図書室。さきほどからまだ一周もしていない壁掛け時計の秒針を、琴紗月は睨みつけた。 人を呼びだして待つなんていつぶりかしら。と独りごち、私は辺りを見回す。今の時分はテスト期間でもないので利用者はほとんどいない。現に今は、受付の図書委員のほかは誰もおらず、静かな図書室の中で、自分のひとりごとがやけにはっきりと耳に届いたのだった。 ここを待ち合わせに指定したが、それは彼女とふたりきりになれて、しかもちょうどいい場所だと思ったからだ。だけどもしかすると、いつもの場所を安心する空間だと感じていて、無意識に選んだのかもしれない。 「それにしても遅いわねあの子。私を待たせ…