聖域、自由領域、避難所的な要素を含む場所のこと。 神殿、市場などがこれに当たり、日本では「縁切寺」が分かりやすい例である。商業都市や強力な豪族の居城などにもアジール性があった。近代国家にはその統治権力の及ばない領土は無いので、存在し得ない。 語源はギリシア語のasylon=不可侵。 同源の英語asylumには、養育院、癲狂院、収容所、避難所などの意味がある。
市原郡に武士村といふあり。彼地に、山高くして舟行の標となるあり。山上に古神祠あり。土俗相伝、神誓ありて盗賊を護すと。賊遁れて此山に匿るヽ時は見へず。故に盗神の称ありと。思ふに、跖が徒を祭れるにてもあらじ。此地、山深く人居稀にして亡命逃竄の徒の巣居となりぬれば、かく汚名を蒙らしめけり。中村国香(江戸時代中期の儒者)。『房総志料』より ちょうど10年前の4月の寒い日、この泥棒神社こと建市神社へ出かけてみた。千葉県内房線の五井駅から小湊鉄道に乗り換え、上総三又駅で下車。駅周辺は見渡す限りの水田で、その水田の中の道を東へひたすら歩く。広い田んぼが広がっている中を2キロほど歩くと武士の集落に出る。さらに…
あなたには「居場所」ってありますか? 花拾いの庭を立ち上げた時、わたしはその場を「組織」ではなく、「居場所」にしようと決めていました。 その際、参考になったのは、臨床心理士である東畑開人氏が、著書『居るのはつらいよ』及び『悲しみとともにどう生きるか』で述べておられる”アジール”と”アサイラム”の違いにみる居場所への考察と、昨年参加させていただいた、NPO法人パノラマの代表理事を務める石井正宏氏による「校内居場所カフェ」養成講座で学んだ事柄でした。 居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく) 作者:東畑 開人 医学書院 Amazon 悲しみとともにどう生きるか …
あの山の向こうが目指すべきサンクチュアリ、我が一族のアジールである。 この山を越えてこの川を遡り、 こここそがその地である。 サンクチュアリ、アジール、という概念は西欧由来だが、一般的に前者は”聖域”、後者は”避難所”と訳される。本来同じ意味合いにも関わらず何だか後者の方に悲壮感が漂う。日本では網野善彦の”無縁、公界、楽”としてのアジール分析が名高い。世間と縁を切った世界、世俗権力の介入が及ばない世界ということである。そこは、まさに自由、平等、平和の世界なのである。アジールとは、「心身に迫る脅威から人間を庇護する平和の場」、とある学者は定義する。 我が山間の故郷(旧豊後海部郡中野村)もかつては…