アニエス・ヴァルダの『冬の旅』で死に至る少女モナの旅の過程はあまりに哀しく痛ましい。モナと道中で関わり合いになる人々は、モナがいる間は一応彼女のことを気にかけるものの、離れた後に彼女の安否を気にして追いかけ探し回るような人はひとりも出てこない。唯一その立ち位置に近かった女性教授は、その清潔で華麗に着飾った姿がモナの度々「汚い」と形容される身なりと残酷なまでに対比されており、そこには人間としての何か決定的な断絶のようなものが示されているように思う。旅の過程で出会う人たちは、皆が皆、何かしらモナの「持たざる」要素を浮き彫りにする。家を持つ人、食べ物を持つ人、仕事を持つ人、資産を持つ人、哲学を持つ人…