1990年の『プリティ・ウーマン』(ゲイリー・マーシャル監督, 1990年)は、娼婦が大富豪に見初められ、シンデレラのように救い出される物語として、時代を象徴する恋愛映画となった。冒頭の彼女は典型的な名娼婦の服装に身を包みながらも、有名ブランドの服を着こなすことで、愛と夢の現実化が可視化される。ハリウッドはここで「娼婦の愛」をロマンティック・コメディの枠に収め、結末をハッピーエンドに保証することで観客の夢を叶えてみせた。 しかし『ANORA アノーラ』(ショーン・ベイカー監督, 2024年)が描くのは、まったく別の終わり方である。主人公アノーラ(アニ・ミケエワ)が抱いたイヴァンへの想いは、持続…