「いやぁ、全然当たらんな。 ここでみんなと予想する馬券だけはことごとくハズレよる。」 ビールを片手にコギンちゃんが嘆く。 それもそのはず、今年に入ってから馬券の調子はすこぶるいいのだが、夕ぐれ食堂で考える馬券だけは大外れなのだ。 「他んレースで当たっちょるならよかろうもん。 それよりか、来週はいよいよ展示会やろうが。 そっちの方ば頼むぜ・・」 かわはぎのあぶりを嚙みながらとっしゃんが言う。 年に2回の着物の展示会が迫っていた。 世間はオミクロン株で大騒ぎだが、なぜかコギンちゃん達周辺は無風状態。 こんな田舎じゃコロナも見向きもせん、と商店街のみんなは冗談を言い合っている。 おかげで去年は散々な…