2024年5月に発売されたアラン・テイラーの最新作『American Civil Wars: A Continental History, 1850-1873』*1は、19世紀半ばの北米大陸を舞台に繰り広げられた激動の歴史を、斬新かつ包括的な視点から描き出す野心的な著作である。ピューリッツァー賞を二度受賞し、アメリカ初期史研究の第一人者として名高い著者は、本書において従来のアメリカ中心史観から大きく踏み出し、北米大陸全体を視野に入れた壮大な歴史叙述を展開している。 本書の最大の特徴は、アメリカ南北戦争を単なる一国の内戦としてではなく、メキシコやカナダを含む北米大陸全体の文脈の中に位置づけている…