田中小実昌(1926-2000)『文藝春秋 芥川賞・直木賞150回全記録』より無断で切取らせていたゞきました。 表立ってのお役目を了えて、人さまになんら影響することありえぬ身になっての無責任ゆえに、見えてくることもある。 「近代文学」という古典芸能の一分野のなかでのみ、私は生きている。 文学は役割を終えたなどと、わけ知りをのたまうかたもおいでだが、ばかを云っちゃあいけない。人が生きてるかぎり文学はなくなりゃしない。たゞ「近代文学」にあった暗黙の約束事のいくつかが、守られなくなるだけのこと。 次なる文学はどんどん出現する。たゞそれらを吟味する尺度としては、私の文学観は役に立たない。次はどうなるか…