あれは、銭湯にいった帰り道。 たぶんもう22時は過ぎてたんじゃないかなぁ。 びちゃびちゃの髪をゆらしながら、私は小学校からの友達と、夜中の住宅街をプラプラしていた。 「あれ、何なんだろうね?」 そう言ってルイちゃんが指差したのは、どこにでもある古いアパートの2階にある、奇妙な看板だった。 “貸本屋” ・・・そこにはゴシック体の赤い文字でそう書いてあった。 気になって階段を登ってみると、その部屋らしき扉には何も書かれてない。 だが、ほんの少しだけ空いた隙間から、中の灯りがじんわり漏れていて、私はそこからできるだけ気配を消して中を覗き込んだ。 ・・・大量の本が、、机の上に積まれている。 「・・・こ…