* 映画への希望と失望 かつて「映画は世界の認識を変える」と素朴に信じられた時代がありました。リュミエール兄弟が1895年にシネマトグラフを公開して以降、ある時期までのフランスでは「映画」という新時代のメディアは従来の時空間の観念を変容させ、伝統的な芸術の枠組みさえ揺るがすだろうという期待を背負っていました。 その背景には第一次世界大戦を一つの契機として勃興した前衛芸術運動があります。ここで「前衛」と「映画」は等号で結び付けられ、1920年代のフランスにおいては様々なアヴァンギャルド映画が生み出されることになります。フランスを代表する作家・演劇家の一人であるアントナン・アルトーもまた当時、新時…