はじめに・アラビア科学について知る意味 アラビア科学は、中世(500年頃~1500年頃)にとくに繁栄したイスラムの国ぐにで研究された科学のことだ。イスラム科学ともいう。今から1000年ほど前の世界では、イスラムの国ぐには世界の中心で、その科学研究は最先端だった。イスラム教は600年代のアラビア半島で、アラブ人のムハンマド(570?~632)によって創始された。その後アラブ人を核とするイスラムの勢力は急拡大し、700年頃までにはウマイヤ朝(661~750)という政権のもとで、今の「中東」といわれる地域の広い範囲を支配する巨大な帝国を築いた。このイスラムの帝国は、700年代半ばにアッバース朝(75…