もしやこの帝国はーと、フビライ汗は思ったー精神の黄道に宿る幻の星座にほかならぬのではないか。 「いつか日かこの表象をことごとく知るときには」と、フビライ汗はマルコに問うた、「朕はわが帝国をついに所有し得ることになるのだろうか?」 すると、若者の答えて言うに、「陛下、そのように信じ給うてはなりませぬ。そのときには陛下御自身が表象中の表象とならせ給う日でございます。」 イタロ・カルヴィーノ 「マルコ・ポーロの見えない都市」 米川良夫訳 P.32-33 河出書房新社 1977年初版 住んでいる都市と、旅で訪れる都市は違う。 初めて、あるいは2-3度しか訪れない、そしてこの先もあまり訪れないであろう都…