七つの海を支配した超大国イギリスも、中世頃にはずいぶん惨めなものだった。 この国の対外貿易は――島国であるにも拘らず――、ほとんど全部が外国商人どもの手に落ちていたといっていい。 ハンザ同盟、ヴェニスの商人――そのあたりの連中が大あぐらをかいていた。彼らは宛然天使のように柔和な微笑を浮かべつつ、猫撫で声で王侯貴族に接近し、その幅広な袖の下へと山吹色の菓子をねじ込み、ねじ込みまくり、以って様々な利権を引き出し、ふと気がつけば当の英国人よりもずっと有利な条件のもと商業に従事する「高み」にのし上がっていた。 (ヴェニスの街並み) タダみたいに安い関税が例としてまず相応しい。賄賂とは元来、そういう性質…