岩波文庫の『20世紀ラテンアメリカ短篇選』で、パスの『青い花束』を読んだ。非常に短い作品だがとてもよかったので、この記事を書くことにした。 この作品の物語展開は四つに分けられる。まず特に意味を持たない描写だけのパートがあり、次に世界の美しさを称賛するパートがあり、目を狙われる危機のパートがあり、最後に村から逃走するパートがあって完結する。綺麗な構成である。 作品の白眉は唐突な危機の場面にある。そこで脅迫者は「青い目」を求めていると言う。脅迫者の動機の美しさに我々ははっとさせられる。その美はじつに身体の損傷の危機と裏腹なのだ。 美に耽溺することは死に近づくことであるという真理がここには開示されて…