つまらないギャグ。ということは「オヤジ」とは「つまらない」ものなのか。
しかしながら、オヤジギャグに対するアンチテーゼとなるようなものを仮に「ヤングギャグ」と呼ぶならば、残念ながらそのようなものは寡聞にして聞かない。概して若者の発する言葉には、ウィットもエスプリもないことのほうが多い。そもそも若年層にはボキャブラリーそのものが貧困なので、読書量も多く、人生経験を豊富に積んだ中高年層の、機知に富んだ巧みな言葉遊びに対抗することは不可能といわざるを得ない。
すなわちオヤジギャグとは、ぎすぎすしがちな社会生活における潤滑剤の役割を持つと同時に、あらゆる局面で、敏感に空気を感じ取り、数万語の語彙の中から限定された時間のなかで適切な組み合わせをチョイスしなければならないというきわめて高度な精神的活動の結果生み出されたものといえる。知識と教養ある社会人のたしなみとして、オヤジならずともぜひとも身に着けておきたい能力である。