夜が明けても、塔は眠らなかった。 外では、霧が湿地の上を低く流れている。 補助信号室の壁の向こうでは、古い配管が冷えて軋み、床下の線が時折かすかに鳴った。発電機の唸りは夜中から変わらず、一定の間隔で建物全体へ振動を送り続けている。 ドミノは補助卓の前に座ったまま、ヘッドホンを片耳だけ外した。 補助信号室で、名もない電波に耳を澄ませるドミノ。 眠ってはいない。 だが、起き続けていたとも言い切れなかった。 浅いノイズに意識を沈め、浮かび、また沈める。その繰り返しの中で、夜が少しずつ薄くなっていった。 放送室のマイクには触れていない。 ON AIRのランプも、赤くはならなかった。 彼女がしたのは、た…