職場の学校では毎年この時期、同時通訳の実習が行われます。二年間通訳や翻訳を学んできた留学生が、その総仕上げとして日本語の講演会を英語と中国語に同時通訳するというものです。会場は同時通訳ブースつきの大きな会議室。講演会の講師は外部からお呼びすることもあるのですが、今年は僭越ながら私が講師役を仰せつかりました。英語も中国語もわからない日本人が話すという設定で、講演後の質疑応答まで含めて留学生のみなさんが訳してくれます。講演のテーマは「カズオ・イシグロとイングランド」にしました。私は英国の作家カズオ・イシグロ氏の小説『日の名残り』が好きで、昨年の夏にその小説の舞台となっている南西イングランドを「聖地…