その梅の木の麓にあるちいさな野原に、虫たちの村がありました。 その村には、クモの仕立屋がいました。 クモの仕立屋は八本の手足を使い上等の糸で仕事をするので、繁盛していました。 この村は、ちいさな村でした。村に今、秋が来ていました。 静かな秋が来ていました。 ある日、クモのところに一通の手紙が来ます。 持って来てくれたのは、郵便屋のバッタです。バッタは気のいい青年で、長い脚で毎日村中を飛び回っては、郵便を届けます。 「クモさん、息子さんからの手紙ですよ」 クモには息子がいて、隣村で仕立屋をやっています。 バッタは、クモが息子からの手紙を楽しみにしていることを知っているので、にこにこ、手紙を渡しま…