此岸と彼岸を渡すように、どの川の上を繋ぐ橋にも一種の音楽がある。 その音楽は自然の中から取り出され、編成され、そして固まっている。 小さな川とも呼べない溝の中に埋もれた沖縄軽便鉄道の跡。 しかし、かつてその上を確かに列車が走っていたのだ。 鉄の線路は今は取り外され、その跡形を消すように、 人の視線が過去の時間の上を踏んで歩いている。 埋もれた遺跡は時代の骨であるけれど、 記憶は脱皮した土着性を民族として着せ替えていく。 新月の夜、無数の星屑のかすかな光の下で、 カムパネルラの乗った銀河鉄道と同じ列車が、 この溝の幻のレールの上で停車し、そしてまた発車していく。 僕らは、その車窓のガラスの外側に…