インドリ:筆者が作成しました わたしが唯一持っている文学全集は、森鴎外だけで、ずいぶん高いのを買ったので、9割方は読みました。が、そのほとんどを覚えていません。しかし、例えば「最後の一句」とか「高瀬舟」などはその内容が痛烈で、何かの拍子に頭をぶつけた時のようなジーンとした痛みのようなものだけが今でも残っています。 しかしながら、その内容は殆どを忘れてもいるという、人が聞けば辻褄の合わないような記憶なのです。 ■ エッセイ風 むしろ、一番の鴎外の作品で面白かったのは、カンガルーという動物の名前の付き方の顛末を書いた随筆です。 ある探検家であった人が、始めてカンガルーを見た時、ジャングルの原住民に…