メキシコの大地主が、愛娘を妊娠させた男アルフレド・ガルシアの首に賞金を掛けた。酒場のしがないピアノ弾きベニー(ウォーレン・オーツ)は、恋人のエリータ(イセラ・ヴェガ)からガルシアは既に死んでいて、葬られていることを聞く。2人はガルシアの墓まで行って死体を掘り起こして賞金を頂こうとするが、他の賞金稼ぎもガルシアの生首を狙っていた。
うらぶれた「負け犬」の男が人生で1番輝く瞬間を捉えた、ペキンパーの秀作。何となくピクニック気分で首取り旅行に出掛けたのが、徐々に男の情念をたぎらせて行くところに、「男の映画」たるゆえんがある。運命の歯車が狂いだすと共に、死体の山も築かれて行く非情な展開で、脚本も上出来。腐乱した首にたかるハエのように、わらわらと殺し屋や賞金稼ぎが群がる様子や、ベニーが首に何となく共感を覚えて話し掛けるようになるなど、ブラックユーモア的な内容は注目に値する。ペキンパーならではのスローモーションを駆使したヴァイオレンス描写も健在で、2人組の殺し屋との死闘や、ラストシーンなどで強烈な印象を残す。
ベニー役ウォーレン・オーツは一世一代の名演技。『ワイルドバンチ』でも悪役マパッチ将軍役だった、ペキンパーの盟友エミリオ・フェルナンディスが、ここでも悪役の大地主役を怪演。ロバート・ウェッバーとギグ・ヤングも初老のゲイの殺し屋役で好演。ペキンパー作品2作で主役をこなすクリス・クリストファーソンも、ワル役で1場面だけ顔を出す。
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