横光利一の『梅雨』(河出書房新社『底本 横光利一全集第13巻』)という文章を読んだ。戦前の1939年に書かれた短い随筆だ。前年の梅雨について触れ、曇天が続いたこと、鶯が庭の繁みで鳴き続けていること、青森経由で北海道に行ったことなどが書かれている。青森にはキリストが住んだという村があるという記事を読んだこと思い出した横光は、途中でキリストそっくりの人物に出会った話も書いている。今年の梅雨明けも近いが、コロナ禍が続いているから、横光の文章を読みながら私も想像の旅をしてみようと思う。 『梅雨』によると、横光は川端君(担当の編集者か)と2人で奥羽本線に乗り青森に向かい、途中浅虫温泉で一泊した。その車中…