Gram Parsons。1946年11月5日フロリダ生まれ。1973年9月19日、ドラッグにより逝去。享年26歳。バーズ、フライング・ブリトー・ブラザースのメンバー。カントリー・ロックの世界をまったく新しく切り開いた第1人者。ソロ・アルバムに「GP」「Grievous Angel」、おもな参加アルバムにThe Byrds「Sweetheart of The Rodeo」など。いまでも聴くものの心のなかに直接ひびいてくるような、瑞々しい彼の音楽と、その誠実な生き方を尊敬するものは、様々なジャンルのミュージシャンをふくめ、数多い。以下、長田弘「アメリカの心の歌」ISBN:4004304547。
「グラム・パーソンズの遺体は柩におさめられて、次の朝の飛行機でただ一人の妹のいる故郷の南部に送られるはずだった。だが、送られなかった。柩が夜のうちに飛行場から盗まれたためだ。盗んだのは、グラム・パーソンズがもっともこころをゆるしていた友人の一人だった。柩を車にのせ、途中で大量のガソリンを買いもとめて、遠くジョシュア・ツリー国定自然記念物公園まで突っ走って、友人は真夜中の岩の上で、柩を焼いた。仲間のギタリストが交通事故で死んだとき、葬儀につらなったグラム・パーソンズは、死者の顔に聖水がふりかけられるのを見て、言った。まちがっている。もしもぼくが死ぬようなことがあったら、ぼくを砂漠に連れていって、焼いて、灰はジョシュア・ツリーの木の下に撒いてくれ。忘れないでくれ。それがぼくの希望だ。――グラム・パーソンズの希望をかなえるには、ほかの方法はなかった。逮捕されたときに友人はそう言った。」(前掲書162頁より)