「フレンチ・レストランを扱った作品」の第三弾は、斎藤千輪『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』(角川文庫、2018年)。東京・三軒茶屋にある小さなビストロ。決まったメニューはなく、好みや希望をギャルソンに伝えると、名探偵エルキュール・ポアロが大好きなオーナーシェフの伊瀬優也33歳が、その人だけのコースを作ってくれます。しかも「人の痛みを癒せる」力を有した料理人でもあるのです。新米ギャルソン・神坂隆一の目線で、フランス料理の魅力と、ビストロ・スタッフと客との交流が綴られています。 [おもしろさ] 運び、観察し、客の要望を先読みする 本書の魅力は三つ。一つ目は、謎めいた客に対して、ビストロ三軒亭のスタッフ…