古い銭湯に行くと訳がわからない深さの浴槽に出会うことがある。 立って入るんだか座って入るんだかよくわからない水深に一瞬 「子どもとか、うっかり溺れないのか?」 とびっくりするのだけど、ゆっくり入ってると水量が多いだけあって水圧のかかり具合など、実際なかなか気持ちがいいので感心する。 パッと見は小さな浴槽だけど、さすがに家の風呂とは比べ物にならない快適であるなあ、などと思いながら腑抜けた顔を天井に向けると、銭湯特有の高い高い屋根から、男湯と女湯を仕切る壁に向かって、珍妙な針金が渡してあるではないか。 明らかに素人が施した、こだわりのない仕事ぶりではあるが、何しろ高い天井だ。 それほどおざなりな心…