ケン・グリムウッド

宮野優『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』感想 トゥモロー・ネヴァー・ノウズ (角川書店単行本) 作者:宮野 優 KADOKAWA Amazon とても面白かった。「永遠の「今日」を繰り返す」というループする同一世界を舞台にした五話の物語。特に第一話と五話が対になりもしていわゆる連作短編集としてひとまとまりの味わいも持ちつつ、全体および各話それぞれがあるいは「ループもの」というジャンルの様々なバリエーション（例えばケン・グリムウッド『リプレイ』、北村薫『ターン』）を作者なりに翻案するようでもあり。「ループ」した世界をある種の閉鎖環境と捉えそのジャンルの名作をやはり翻案するようでもある（例えばウィリ…

輪転式ステレオプティコン - jailed in 2002 -作者:枯野 瑛KADOKAWAAmazon 「やれやれ。タイムリープというものは、あれだな。読んでいるぶんには楽しいが、モブ側として体感するとややこしいものだな」 2002年6月5日、午前6時17分32秒。東京と呼ばれていた都市の一部が消滅。のちに「来訪者の日」と呼ばれるその日、何百という来訪者が地球に降り立った。少年の青春と、地球人という種の青春時代は強制的に終わったのかもしれない。 「からくりが、読めたのか？」「概ねのところは。ケン・グリムウッドの『リプレイ』と言ってわかるか？」 都市と愛しい人が消えてしまった最後の一日、200…

佐藤正午→５冊目 タイムマシンは出てこないタイムスリップものだが、実はループものの先駆けといってもいいのではないだろうか？いまでは「オール・ユー・ニード・イズ・キル」という私の好きな映画にも使われているアイディア、ある一定期間を延々と繰り返すタイプのストーリーの萌芽を感じさせるアイディアだと思う。「オール・ユー……」はおそらくゲームからの発想で、いわゆる死にゲーと言われるタイプ －基本的に一本道のFPSのゲームなどで、何回も死んで攻略方法を編み出して行くゲーム－ から着想を得ていると思うが、佐藤正午さんはどこからこの発想を得たのだろうか？たしかに同時期の出版で「リプレイ」なんかがでていたので、…

読んだ本 恩田陸『夜明けの花園』 エリザベス・ストラウト『オリーヴ・キタリッジの生活』 ジョン・フランクリン・バーディン『悪魔に食われろ青尾蠅』 山本周五郎『赤ひげ診療譚』 マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』 ケン・グリムウッド『リプレイ』 村田沙耶香『信仰』 井沢元彦『猿丸幻視行』 加藤寛『図解 日本の漆工』 マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』 『オリーヴ・キタリッジの生活』：「寿命は短いほうがよい」← 真理すぎる。 『イギリス人の患者』：多文化の交錯、詩的な文章、曖昧な時系列など、小説として好きな要素が詰まっていて非常によかった。 『リプレイ』：タイムリープものの原点に近い作品…