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ゲノムの方舟

(読書)
げのむのはこぶね

佐々木敏(著)
単行本:571p;サイズ(cm):182x128
出版社:徳間書店;ISBN:4198612501;(2000/10)

内容(「BOOK」データベースより)
西暦2003年8月、スイス・ジュネーブのWHO(世界保健機関)本部ビルで開かれていた特別総会を「緑の戦士」と称するテロリスト集団が襲撃、WHOの各国代表を人質に、国際社会に遺伝子工学研究の一切の中止を要求した。犯人たちが細菌・ウィルス兵器で武装していると知ったスイス政府は、アメリカ政府に生物兵器テロを専門とする特殊部隊の派遣をひそかに要請した。アメリカ政府は、白人のスミス大統領の釆配で陸軍細菌戦特殊部隊「ホワイトベレー」をスイスにいちばん近いドイツの米軍基地に派遣して待機させていた。しかし、大統領が訪日からの帰途、大統領専用機エアフォースワンの機内から黒人のキング国防長官へ電話中に、突如、一切の交信が途絶えた。キングは軍事非常事態とみなして副大統領以下、主要な閣僚と軍の幹部を国家安全保障会議に召集。白人のローズ副大統領の大統領代行就任手続きが未了のため、キングがホワイトハウスを指揮することとなった。キングの決断で、ホワイトベレーがWHO本部に突入し、犯人全員を射殺し人質を解放した。その頃、デンバーを中心としてコロラド州では、原因不明の奇妙な日本ブームが起きていた。細菌やウィルスの増殖(細胞分裂)のスピードと寿命を変える研究で世界から注目されつつあった日本人遺伝学者、井坂博史は、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授として日本からボストンに移住する直前、全米遺伝学会に出席するためデンバー行きの飛行機に乗っていた…。ヒトゲノムを巡る陰謀劇の裏側。衝撃の近未来国際サスペンス。

内容(「MARC」データベースより)
2003年WHOの特別総会をテロリスト集団「緑の戦士」が襲撃、人質を取り、遺伝子工学研究の一切の中止を要求した。犯人は射殺され、人質は解放されたが、その頃、コロラド州で原因不明の奇妙な日本ブームが起きていた…。

目次

  • プロローグ -- アメリカのいちばん大切なもの
  • 第1章 ジュネーブの蠢動
  • 第2章 デンバーの天空
  • 第3章 欧州の恐慌
  • 第4章 世界の変節
  • 第5章 キューバの緊張
  • 第6章 ユダのいない晩餐
  • 第7章 ボストンの誘拐
  • 第8章 ジュネーブの深層
  • 第9章 ニューヨークの死角
  • 第10章 最後の晩餐
  • エピローグ -- ユダはいたのか?

書評

○手に汗握る攻防
(前略)ヒトゲノムの遺伝子操作をベースにした国際政治小説。メインテーマは21世紀の大問題である人口爆発対策に遺伝子操作を使おうとする米国の財閥グループと、知らず知らずにその国際的な謀略に巻き込まれる日本人遺伝学者井坂博史の手に汗握る攻防だ。
 同時に舞台背景として、最先端の遺伝子問題だけでなく、世界の軍事、政治、教育、宗教、人種などの問題が米国中心に縦横無尽に展開されていく。タイトルは大洪水から逃げる「ノアの方舟」になぞらえたもので、途上国の人口爆発から自分たちだけが生き延びようとする財閥グループを表現したものだ。560ページとやや大部だが、著者の筆力はそれを感じさせない。--『週刊東洋経済』2000年11月11日号、p.82「新刊短評」より
○知識と分析には舌を巻く
テログループ緑の戦士がジュネーブのWHOビルを占拠、アメリカは「ホワイトベレー」を派遣してこれを制した。しかし、人質となったアフリカ代表団は次々と奇病で急死する。同時に中国華南地方でも上咽頭ガンの患者が発生する。緑の戦士を送り込んだテロ国家、カルタゴ、内戦状態に陥ったキューバが複雑にからむ。
(中略)今、話題のゲノム技術を根底に置いて物語はスリリングに展開する。主人公で遺伝子工学の権威である井坂博史の説明に、ゲノムへの理解を深めるのもよし、アメリカの支配階級のものの考え方を学ぶのもまたよし、当然、純粋な国際冒険小説としても十分な水準にある。
 著者の国際政治、遺伝子技術、IT技術の知識と分析には舌を巻く。次回作のテーマは中国というから、いまから期待したい。(後略)--『Venture Club』2001年1月号、p.104「今月のイチオシ」より
○世界レベル
2段組の分厚い一冊でしかも読みごたえがある。しかも長さを感じさせないスリリングな展開が売り物だ。
(中略)遺伝子工学の研究を一切中止せよと通告するテロ集団の攻撃に対して、アメリカをはじめとする各国首脳が緊迫した対応を迫られる。
 一方、霊長類や生物工学を専門とする日本人学者の周辺にも穏やかではない動きが始まる。
 人類学や遺伝学のほか、軍事、国際政治、歴史、経済など、さまざまな分野の知識をフルに投入した本作は、物語の中に生きる人物の描写も確かで飽きることがない。(中略)日本人による世界レベルの小説の誕生か。--『Lapita』2001年1月号、p.123より
○極上のエンターテイメント
2003年、ジュネーブのWHO本部に「緑の戦士」と称するグループから脅迫状が送られてきた。ヒトゲノム計画をはじめとする遺伝学研究を即刻中止しなければ、近く開催される総会で生物兵器を使用し、参加者を皆殺しにするという。
(中略)一方、日本人の遺伝学者井坂博史は細胞やウイルスの増殖に関する画期的な研究でMITに招かれ、彼の研究をめぐっていくつかの組織が動きだし身の回りに危険が迫る。キューバではゲバラの息子が政権を掌握、不穏な動きを見せていた。
(中略)ヒトゲノム解読や生物兵器などの最先端科学、そして優生学といった近い将来われわれが直面するであろう難問を極上のエンターテイメントに仕立て上げた力作。--『日刊ゲンダイ』2000年12月23日付、「週末に読みたい本」より

○「『国民の道徳』と対照的」な、フィクションの顔をしたノンフィクション--内山書店『月間中国図書』2001年2月号p.13、ある中国哲学者の「つくる会」批判の中で

○「緻密な構成にぐいぐい引き込まれて一気に読ませる」--『活字倶楽部』2001年冬号p.100-101

○「極上のエンターテイメント」--『日刊ゲンダイ』2000年12月23日付(22日発売)p.13「週末に読みたい本」

○「人物描写も確か……世界レベル」--小学館『ラビタ』2001年1月号(2000年11月発売)

○SF作家新井素子さんが「かなりの読みごたえ」。--『新刊展望』2001年1月号(2000年11月?発売)p.40-41「日々、平穏」【読書日記】

○「超ド級新人登場!!」--『ダ・ヴィンチ』2001年2月号(2000年12月発売)

○「技術的に深い。専門家をも納得させる恐ろしさだ」--『エンジニアtype』2001年1月号(2000年11月末発売)p.151

○「中国を舞台にした次回作に、いまから期待したい」--『ベンチャークラブ』2001年1月号(2000年11月末発売)p.104

○「可能性を秘めた、禁断の扉を開いた」--『朝日新聞』2000年11月27日付朝刊(読書欄)

○「期待の大型新人が遺伝子研究の負の部分に真っ向から挑んだ」--『ダ・ヴィンチ』2000年12月号(10月発売)p.94

○「560頁の超長編だが、著者の筆力は長さを感じさせない」--『週刊ポスト』2000年12月1日号(11月発売)p.174

○「絵空事でない恐ろしさを感じる」--『東京新聞』2000年11月19日付朝刊(読書欄)

○「これは始まりにすぎない」--『週刊SPA』2000年11月15日号p.109

○「手に汗握る攻防」--『週刊東洋経済』2000年11月11日号p.82

○「海外の作家に負けない」--『週刊小説』2000年11月10日号p.89

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