あの人のあの言葉、どこにあったんだっけ。そうやって過去に読んだ本をめくった経験はないでしょうか。わたしは割とよくあって、しかもそれが楽しかったりします。 情景や雰囲気はしっかり覚えているのに、肝心の名前が未だに出てこない本もあったり。多分あの人のこの時期の作品だと思うんだ…とアタリをつけてもことごとく違う。いつか偶然再会できたらいいなと思いつつ、本を読む日々です。 鈴木結生著「ゲーテはすべてを言った」は、そんな気持ちに焦点を当てた物語だと感じました。頭の片隅で、いつも探している。それがだんだんと膨らんでいくのがわくわくしたし、主人公の人間関係や日常が自分のそれとはかけ離れているのも興味深かった…