「シャンタル・アケルマン映画祭」で公開された5本の中で、とりわけ音楽が印象的に使われていた作品が、「囚われの女」(La Captive, 2000)、です。 chantalakerman2022.jp 登場する楽曲は主に3曲です。 最初はラフマニノフの交響詩「死の島」。 スタニスラス・メラール演じる主人公のシモンが、「囚われの女」アリアーヌ(シルヴィー・テステュー)を尾行する冒頭のシーンから強烈な音響で画面に被ってきます。 舟の運行を思わせるような5/8拍子の重苦しい音楽が、無表情に近いメラールの青い瞳にとびきりの不穏さを共鳴させ、ラフマニノフにしては前衛に傾斜した不協和音の洪水が波のように押…