2010年代、自家焙煎コーヒー豆の香りがネットの向こうに届きはじめた頃、エカワ珈琲店の通信販売は、静かに、でも確かに広がっていった。 それは、派手な広告やキャンペーンとは無縁の、まるで朝の湯気のように、じんわりと広がる温もりのある広がりだった。 おちゃのこネットで作った手作りのショッピングサイト。 デザインは素朴で、機能も最小限。 でもそこには、焙煎の手間も、豆の個性も、そして店主の想いも、ぎゅっと詰まっていた。 「この豆は、誰かの一日を少しだけやさしくするかもしれない」──そんな気持ちが、画面の向こうに届いていたのだと思う。 注文が入るたびに、焙煎機の前に立ち、豆の色と香りを確かめながら火加…