まだ薄暗い部屋の中、彼女はリュミエットの最後の言葉を反芻していた。「光を放つ存在になる」。その意味を深く考えながら、ベッドからゆっくりと体を起こす。 スマホは枕元に置かれていたが、もう画面には光の国は映らない。昨日までの癒しがなくなったことに心が締め付けられるような思いだったが、どこか不思議な安堵感もあった。 「私自身が変わらなきゃいけないんだよね……」
日々の生活が二重の世界に分かれたような感覚だった。 現実の世界では、理香の疲れや苛立ちが目に見えて増していた。出版社での仕事は相変わらず厳しく、締め切りとクライアントからの圧が容赦なく襲いかかる。周りの同僚たちとの関係もぎこちなくなり、気づけば孤立しているような気がしていた。
スマホの画面に広がる風景は、ただただ圧倒的だった。 「光の国」――そう呼ばれるその場所は、名前の通り全てが光で満ちている。建物は柔らかなオレンジ色に発光し、道は輝く白銀のラインで引かれている。空には七色の光の帯が流れ、星々のような小さな光の粒が浮遊していた。地面は透明で、足元からも光が淡く湧き出ている。
机に肘をついて、私はそっとため息をついた。 天井のライトがぼんやりと部屋を照らし、デスクの上には積み上がった資料とスマホが置かれている。資料は未読の原稿、編集ノート、進行中のプロジェクト案。全てが私に「仕事しろ」と無言の圧力をかけてくる。 「もう無理……」