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サブリミナル効果

(一般)
さぶりみなるこうか

サブリミナルsubliminal=識閾下 

概要

通常我々が明確に認識している「意識」より下の部分、いわゆる潜在意識や、意識と潜在意識の境界領域に刺激を与えることで表れるとされる効果。
テレビやラジオなどに、知覚できない程度の速さや音量の映像・音声等を繰り返し挿入し、視聴者の購買意欲を増すと称するものなどをこう呼ぶ。
実際に効果があるかどうかについては、心理学実験では否定されている一方、悪用を危惧する声や、それを利用すると称する商品の販売も広く行われている。
 

発端

1957年、ジェームズ・ヴィカリ(James.M.Vicary)という、マーケティング業の男性が、ニュージャージー州フォートリーの映画館で上映された映画「ピクニック」のフィルムに、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが写ったコマを5分ごとに一コマずつ、繰り返し挿入した、という実験が有名。
映画のフィルムの一コマを人間が知覚することは不可能だが、この映画を上映したところ、コーラとポップコーンの売り上げが顕著に増大した、という。*1
(ただし、この実験が正確にどのような環境で行われたのかは、アメリカ広告調査機構の要請にもかかわらず、きちんとした形で報告されておらず、論文も存在しない)

宗教団体によるサブリミナル効果

熱心な勧誘活動と献本で有名な「エホバの証人」という新興宗教団体があるが、彼らが配っている本、雑誌にサブリミナル効果がある不気味な絵があると指摘されている。
理由は不明だが宗教勧誘にもサブリミナル効果があるとして教団側がやっていると思われる。

社会的影響

サブリミナル効果が悪用されることで、消費者に不当に購買意欲を抱かせたり、なんらかの政治的傾向を視聴者に植え付けたりすることが可能なのではないか、という危惧を抱く人がいる一方で、「サブリミナル効果」を謳い、聞くだけで小食になりダイエットができるCDや、見るだけで学習意欲が向上し成績が上がるビデオ、といった商品も広く販売され、サブリミナルメッセージを込めた音楽を店内に流すことで、万引きを抑止しようという取り組みも存在している。
 
アメリカ軍でも、サブリミナル(や、その他の手法)を用いて兵士を強化することが可能かどうかを検討したが、この依頼を受け、サブリミナル音声テープについて研究した米学術研究会議は、否定的な報告をしている。
 
2000年のアメリカ大統領選挙では、共和党全国委員会がテレビ広告の中で使用したとして問題になった。
これは、民主党のゴア副大統領(当時)を攻撃する30秒のテレビ広告で、「ゴアの医薬政策」という文字の上に、大きな字体で「RATS」とかぶせられた画面がほんの一瞬入っているのが発見されたもので、共和党のブッシュ・テキサス州知事(当時)が非難を浴びた。
 
また、アメリカでは、
「ソ連がテレビ番組に洗脳メッセージを込めている」
「ロック音楽には若者を堕落させる悪魔のメッセージが込められている」
といった、やや妄想的な主張も行われており、日本でも、
「広告や建物のデザイン、貨幣のデザインに至るまで、何者かによって洗脳メッセージが込められている」
と主張する勢力が存在する。
 

日本の状況

日本では、1995年5月、日本テレビ系列のアニメ「シティーハンター3」や、TBSのオウム真理教関連番組の中に、教祖・麻原彰光の画像が挿入されていたことが発覚し、問題となった。
これを受けて、1995年にNHK、1999年に日本民間放送連盟が、それぞれ放送基準を改正し、サブリミナル的手法の使用を禁止することを明文化した。
 
また、サブリミナル効果関連商品は、日本でも大きなマーケットを持っており、サブリミナル効果の悪用を警告する立場も少なからぬ勢力を持っている。
 

科学的立場

サブリミナル効果については、

  • 映像の中に画像を挿入する
  • 映像の中に文章を挿入する
  • 音楽などの中に、小さな音で音声メッセージを挿入する
  • 音楽などの中に、音声メッセージを高速で挿入する
  • 音楽などの中に、メッセージを再生方向を逆転させて挿入する
  • 画像の中に、隠し絵的にメッセージを挿入する
  • 画像の中に、隠し絵的に別の画像を挿入する

など、多数の方法が考案されているが、そのいずれも、心理学者等による多数の検証実験が行われている。
 
その結果、きちんと環境を整え、対照群をおき、プラシーボ効果*2を排除した実験では、サブリミナル効果を狙った映画フィルムやTV番組、CD、アニメ等、いずれもはっきりとした効果はみられないことがほとんどである。
 
仮に、識閾や無意識など、「サブリミナル」そのものが存在するとしても、いわゆる「サブリミナル効果」が実際にどの程度の効果を持つかは、現在の心理学では疑問視されている。
 

実験の例

CBCのテレビ番組

厳密な科学実験とは言えないが、1958年、カナダのテレビ局CBCが、サブリミナル効果を検証する番組を制作し、この中で、ヴィカリーのサブリミナル専門会社に依頼して「すぐ電話をかけろ」というメッセージを数百回挿入した。
そして、視聴者に、何を感じたか手紙を書いて知らせるよう求めたところ500通あまりの手紙が寄せられたが、正解したものは一つもなかった。
また、電話局の調べでは、番組放送後の通話量はむしろ減少した。
 
なお、番組中に放送局にかかってきた電話は14本だが、その内容は「どんなメッセージが込められているのか教えてほしい」というものだった。
 
ちなみに、送られた手紙の半数近くが、「何かを飲んだり食べたりしたくなった」という内容だったという。

ラベル貼り替え

1992年、ワシントン大学のアンソニイ・W・グリーンワルド教授らのグループが、ボランティア120名を対象に、市販の「自信を増す」「記憶力増強」「ダイエット」のサブリミナルテープを一ヶ月間に渡り聞いてもらう実験を行った。
この結果、例えば「記憶力増強」テープを聴いた被験者では、実際に記憶力が増していることが明らかになった。
ただし、教授らは、テープを被験者らに渡す前に、それが何に効果があるテープであるかを示すラベルを、バラバラに貼り替えていた。
つまり、実際に記憶力増強に効果があるはずのテープを聞いた被験者より、「記憶力増強」というラベルが貼られているが、中身はそれとは違うテープを聞いた被験者の方が、記憶力が増強されている、という結果となった。*3
 

コーラとポップコーンのその後

ジェームズ・ヴィカリーは、1962年、マスコミのインタビューに、サブリミナル効果を起こす機械を販売する会社を設立し、特許をとろうと考えていた、と答えている。しかし、まともな実験をする前にマスコミに情報が漏れて騒ぎになってしまい、実際には意味があるほどのデータは集まっていなかった、と述べている。
 

補足

なお、意識上にあらわれたもの(見えた、聞こえた)は、意識下ではなくなるためサブリミナルとは言えなくなることに注意。
従って、「〜〜のバナーに、一瞬だけ商品画像が表示されている」といった主張は、通常の方法でそれが見えているならサブリミナルではない。
(TBSの問題では、挿入された時間がやや長く、「サブリミナル」とは言えない、という主張もある)

*1:その値は、コーラ18.1% ポップコーン57.5%であった、という。

*2:いわゆる、「病は気から」。効果があると信じることで効果が発揮されてしまう効果。

*3:プラシーボ効果の典型的な例。

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