子供の頃ロシア民謡が流行っていた。家にダークダックスのソノシートブックがあって「ともしび」「赤いサラファン」「トロイカ」など、欧米の明るさや温感と違う美しさを感じたが、ソ連時代で時折目にするニュース映像にどこか硬く暗い印象もあった。高校進学したばかりのある日、同級生の友人から「チャイコフスキーという映画を観にいかないか」と誘われ、ソ連映画と聞いて少々のためらいもあったが音楽家の伝記だからと観に行った。 映画「チャイコフスキー」(1970)、19世紀後半のロシア帝政時代、友人ピアニストのルビンシュテインが「君の譜面は部分的にピアノ演奏の負担が大きい」と批判、恋に悩んで泥酔して街を歩く、パトロンで…