あたしは、語る。まだ物語が途中で閉じた一頭。けれど、その走りには確かに“物語の種”があった。 その名は――サリエラ。 静かに咲いた、ヴィルシーナ一族の末娘。そして、「走ることとは、誇りをつなぐこと」と教えてくれた存在。 ■ 血統、それは誇り高き“姉たち”の流れ 父はディープインパクト。母はサロミナ。姉には―― サラキア(エリザベス女王杯2着) サリオス(朝日杯FS勝ち、皐月賞・ダービー2着) サリオスの全妹が、サリエラだ。 つまり、「王になりきれなかった名血」の中で、もう一度夢を託された、“最後の光”。 ■ デビュー戦、その一瞬でファンを惹き込んだ 2022年6月。東京の新馬戦。 サリエラは、…