彼と出会ったのは2年前、銀座のクラブだ。当時の私はその年の春先に長野県の片田舎から単身上京し、銀座の新人ホステスとして忙しい毎日を送っていた。 閉店後は誰かのアフターとして焼き肉やカラオケに付き合い、週に2度の同伴出勤日には夕方から豪華な食事をする。世間は不景気のはずだったが、客はみんな金持ちで、周りはいつも賑やか、活気に溢れているように見えた。 その男、島崎(仮名)は常連客の1人で、自称会社員。著名な政治家や芸能人もよく来るその店の中では、ずいぶん地味目のおっさんだった。銀座には「永久指名」という制度があり、いったんあるホステスのお客になると、その後どの女の子が横に付いたとしても、売り上げは…