アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。声優:池田秀一
地球連邦軍と敵対するジオン公国軍のエースパイロットで「赤い彗星」の異名を持つ。主人公アムロ・レイのライバル。ガンダムシリーズを語る上で欠かせない、もう一人の主人公と言える人物。
シャア専用ザク(指揮官用ザクII MS-06S)を初めに、主に赤い色の専用機体に搭乗し、数多くの戦果を挙げたことから、敵味方通じて畏怖畏敬された。
なお、MS-06Sに搭乗したシャアは、連邦軍のオペレーターに「3倍のスピードで接近してくる」と言われたが、機動性についての機体スペックは量産型ザク(MS-06)約30%増に過ぎない。パイロットとしてシャアの技量によるスピードといえる。このエピソードから、ネットスラング「通常の3倍の速度で××する」が一部の間で流行した。
シャア専用ザクの他、シャア専用ズゴック、ゲルググ等に搭乗した。ア・バオア・クー戦では未完成のジオングに搭乗し、トレードマークである赤い機体では無かった*2
宇宙世紀0059年、地球より最も離れた宇宙都市サイド3において、ジオン・ズム・ダイクンの長男、キャスバル・レム・ダイクンとして生まれた。思想家であったジオン・ズム・ダイクンは、エレズム(地球聖域化論)とサイドズム(サイド国家論)を融合させたコントリズムを提唱。また、ニュータイプの概念についても言及していたようだ。
ジオン共和国を建国し、初代首相となったジオン・ズム・ダイクンは、自らが代表となってスペースノイドの自治権獲得を地球連邦政府に要求し続けるが、連邦政府は何の対策も講じることはなく、ジオンとの対立の溝はますます深くなっていく。
宇宙世紀0068年、ジオン・ズム・ダイクンは政敵、ザビ家の一派に暗殺される。表向きは病死とされたが、その死には数多くの疑問が残ることから、数々の疑惑が浮上。ジオン派の報復によりザビ家の二男サスロが暗殺され、両者の抗争が激化する。
ジオン・ズム・ダイクンの遺言*3により、ザビ家の長であるデギン・ソド・ザビが政権を握ることになり、ザビ家一派による本格的な粛清を懸念した反デギン派の一人、ジンバ・ラル*4はジオンの長男キャスバル・レム・ダイクンと、長女アルテイシア・ソム・ダイクンを匿い、地球へと亡命。イタリアの名家マス家の養子となり、キャスバルは「エドワウ・マス」、アルテイシアは「セイラ・マス」と名を変え、ザビ家からの粛清を逃れたのであった。
宇宙世紀0069年、ザビ家一派はジオン派を完全に放逐。それに伴い共和制から公王制へと移行。デギン・ソド・ザビ自らが公王に即位し、国名を「ジオン公国」へと改める。
数年後、青年になったエドワウは、復讐のためマス家を飛び出し「シャア・アズナブル」と名を変えジオン公国へと舞い戻る。そして、士官学校へ入学。それは、ザビ家への復讐を窺うための行動であった。
素性を隠すためマスクを着用し、モビルスーツの操縦訓練を受けた彼は士官学校を次席で卒業*5。卒業後は大尉として宇宙攻撃軍へ入隊する。
宇宙世紀0079年、ジオン公国が地球連邦に対して宣戦を布告。開戦直後のルウム戦役においては、赤く塗装したモビルスーツ「ザク」で参戦し、単独でサラミス級戦艦5隻を沈めるという驚異的な活躍を見せ、敵、味方から「赤い彗星のシャア」の名で恐れられるようになる。この功績により少佐へと昇進したシャアは、自らMS部隊を指揮するようになる。
宇宙世紀0079年、連邦軍の新型強襲揚陸艦ホワイトベースと、新型モビルスーツ「ガンダム」を捕捉したシャアは追撃を開始するも、ガンダムの圧倒的な性能と、民間人アムロ・レイの操縦により撤退を余儀なくされる。その後北米大陸ではザビ家の末弟ガルマ・ザビと合流するが、ガンダム破壊作戦の影でガルマ・ザビを謀殺。本来の目的である復讐の第一段階を果たす。
その後は連邦軍本拠地であるジャブローへの侵攻や、再び宇宙へと戻ったホワイトベースと対決するが、ガンダムの性能と、ニュータイプ能力を急激に開花していくアムロ・レイの力に押され撤退を繰り返す。そんな中、シャアはある女性と出会う。戦争で両親を無くし、娼婦をしていたララァ・スンである。シャアは彼女を愛すると共に、高いニュータイプ能力に着目。モビルアーマー「エルメス」に搭乗させアムロに挑むが、戦いの中アムロとララァが共鳴。呼吸が乱れたシャアは、結果的にララァを死なせてしまうことになる*6。
ジオン公国の宇宙要塞ア・バオア・クーでの決戦において、シャアはアムロと生身で対決するが、最後までアムロと理解し合うことはなかった。陥落寸前のア・バオア・クーで、キシリア・ザビを殺害したシャアは他の兵らと共にア・バオア・クーを脱出。小惑星群アクシズへと逃れ、ジオン残党として再起の時を待つのであった。
アクシズにおいて、ミネバ・ザビの摂政ハマーン・カーンと恋仲になったシャアであったが、ハマーンを捨てて地球圏へと帰還。*7
実在の連邦軍士官、クワトロ・バジーナの軍籍を利用して連邦軍に復員したシャアは*8、スペースノイド派の組織「エゥーゴ」に属し、テラノイド派のバスク・オム率いるエリート集団「ティターンズ」と対立する。やがて、シャアその人としてエゥーゴを率いるも、ハマーンとの戦いで戦死*9。時代の表舞台から姿を消す*10。
ハマーン率いるネオ・ジオンと、エゥーゴとの戦い、ジュドー・アーシタら若きニュータイプの台頭を歴史の影から見つめるのみに留まる*11。
宇宙世紀0092年、ハマーンの死後、ネオ・ジオン軍の残党兵と、独自のコネクションで軍備を増強していたシャアは、ネオ・ジオン軍の総帥として再び表舞台に登場。地球連邦政府に対して宣戦を布告する。
難民収容コロニーであったスウィート・ウォーターを拠点とし、地球寒冷化作戦を発動。フィフス・ルナを連邦政府本部のあるチベットのラサへと降下させ、大打撃を与える。
また、巧みな交渉術により、連邦軍の管轄にあったアクシズを譲り受けたシャアはルナツーを急襲。核兵器を大量に強奪し、アクシズへと積み込み、地球へと降下させる。地球寒冷化作戦の本格的な始動である。
アクシズ落下を阻止する連邦軍外郭進行部隊、ロンド・ベルのエースであったアムロ・レイと再び対決したシャアであったが、サイコフレームの力を最大限に引き出したアムロの力により拿捕され、アムロと共にアクシズを押し返すことになる。アクシズは地球への軌道を外れ、落下は阻止されたが、シャアとアムロは行方不明となった。
なお、シャアはロンド・ベルにサイコフレームの技術を提供するなど、不自然な行動も多々あったという。
のち宇宙世紀0096年のラプラス戦争において残党軍「袖付き」の首魁として現れた「フル・フロンタル」は赤く塗装された専用機*12を高い練度で操り、また声も非常に似ていたというところから「赤い彗星の再来」と恐れられた。しかし、その実態はジオン共和国*13の反連邦勢力などから祭り上げられた「器」にすぎず、いわばシャアからカリスマを残して人間臭さを取り去ったような人物だったようである。最終的には彼もロンド・ベルの前に敗れ去った。
シャア・アズナブルの愛人であったナナイ・ミゲル(角川小説版『ベルトーチカ・チルドレン』ではメスタ・メスア)は生き延びたが、その体にシャアの子種を宿していたかどうかは定かではない。もし宿していたならば、その子孫が再び歴史の表舞台に立って戦うこともありえるかもしれない……*14。
*1:本人は旅客機事故にて死亡、以後キャスバルがシャアに成りすまし、ジオンの士官養成学校に入学する
*2:小説版では、ジオングの代わりにリック・ドムに搭乗
*3:ザビ家による情報操作の疑いも高い
*4:ランバ・ラルの父でジオンの側近の一人
*5:成績はトップであったが、同期にガルマ・ザビがいたため、次席ということになった
*6:これをきっかけに、アムロとシャアはララァの思念にとり憑かれることとなる
*7:この過程の話はガンダムエースで連載していた北爪宏幸「若き彗星の肖像」で語られている。
*8:小説版Zガンダムによる。シャアは行方不明者の軍籍を利用した同様の手法で、サラミス一艦の乗員に匹敵する数の旧ジオン軍人を連邦軍に復員させた
*9:ということになっているのは、あくまで公式記録としての書類上のことである
*10:詳しくは「クワトロ・バジーナ」を参照
*11:本来、富野由悠季が描いていた構想では、ガンダムZZ終盤でシャアが登場しハマーンを暗殺。エウーゴにはアムロも加わり、シャア、アムロ、ジュドーという新旧ニュータイプによる決着の予定であったが、ガンダムZZ放映時に『逆襲のシャア』の製作が決定したため、アムロとシャアの決着は『逆襲のシャア』で描かれることとなった
*13:のち宇宙世紀0100年に自治権を返上することとなる
*14:機動戦士Vガンダムに登場するウッソ・エヴィンの母の名はミューラ・ミゲル。何か繋がりがあるのだろうか?と思わせるが、公式サイドは否定している