277.『坊っちゃん』怒りの日々(4)――お金と数字のマジック 愛と生そして死。書出しの1字たる「親」。漱石文学のキーワードはこれだけにとどまらない。 金と女。漱石の小説は金と女の話であるといって過言でない。 この世に女について書かれない小説は無いであろうが、同じような勢いで漱石の小説にお金の話が出て来ない小説は無いと断言出来る。深刻な金銭トラブルから単に物の値段まで、先に『坊っちゃん』には金の話が百ヶ所出てくると書いたが、金銭に淡白というイメジが強い坊っちゃんにしてこれである。漱石はなぜお金のことばかり書くのだろう。 蓄財に興味があったとはとても思えないし、実業家を単なる金銭の奴隷と見て軽蔑…