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シュレディンガー方程式

(サイエンス)
しゅれでぃんがーほうていしき

量子力学において波動関数のふるまいを与える基礎方程式。
古典力学では物体の「位置」が時間とともに変化していく様子をニュートン方程式で追跡することで物体の運動を記述する。
だが、ミクロな世界を支配する量子力学で物体を記述できるのは「位置」ではなく、「波動関数」と呼ばれる雲のように空間に広がった分布関数のようなものになる。この関数が時間とともに変化していく法則を示しているのがシュレディンガー方程式である。波動関数を \phi(x)とすると、方程式は以下のようになる

 i \hbar \frac{d}{dt} \phi(x)=H[\phi(x)]

i は虚数、\hbarプランク定数とよばれるすごく小さい数・H はハミルトニアンと呼ばれる、ある関数を別の関数へ変換する「演算子」である。
たとえば空間に何もない場合は H= (d/dx)^2の定数倍、となる。\phi(x)の初期状態がたとえば \phi(x)=sin(x)であった場合、x で2回微分して H[\phi(x)]= -sin(x)×定数倍、となる。

このように H を作用させて元の関数の定数倍になる場合は時間発展は簡単で、関数の形は変わらず定数倍の複素数が時間とともにグルグル回転するだけになる。式に書くと  e^{-i \omega t} sin(x)となる。大学の演習でよくやるエネルギー固有状態を求めるという問題は、こういう H を作用させて元の定数倍になる状態を求めるということをやっていることになる。エネルギーは\hbar \omegaに等しい。
ところで、波動関数はあまり勝手な形をとれない。無限大に発散するような関数は駄目だし、物体が存在できない場所では0になってないといけない・など色々な制約がある。こういう場合には、 H を作用させて定数倍になるという時に出てくる定数も勝手な値は許されず、飛び飛びの値のみが存在を許されたりする。「量子」という言葉は、このように量が変化する際に最小の単位があって、その値が飛び飛びに変化するという特徴が語源となっている。
量子力学が定式化される前から、このように飛び飛びの物理量しか許されないという人工的なルールを理論に組み込むことで、それまで説明できなかった実験事実を説明できることが分かってはいたが、波動関数というものを考えることによって、そのようなルールが自然に導き出されるようになった。

より一般的な、ディラックのブラ・ケット記法を使うと、シュレディンガー方程式は
i\hbar d/dt|\psi(t)\rangle=H(t)|\psi(t)\rangle
と書かれる。これは演算子は変化せず*1、状態ベクトル|\psi(t)\rangleが時間的に変化したと見る描像である。これをシュレディンガー描像と呼ぶ。一方、状態ベクトルは時間的に変化せず、演算子が時間発展するという見方もあり、ハイゼンベルク描像と呼ばれている。この場合、演算子が満たす方程式がハイゼンベルク方程式である。シュレディンガー描像とハイゼンベルク描像は、互いに等価であることが示されている。

*1:ポテンシャルのあらわな時間変化を考慮に入れ、H(t)と書いた

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